LBEとは何か

ロケーションベースエンターテインメント(Location-Based Entertainment、略してLBE)とは、その場所に足を運ぶことで成立する体験型のエンターテインメントの総称だ。テーマパーク、常設のイマーシブ施設、期間限定の体験型展示、VRやARを使ったアトラクション、劇場型の没入演劇まで、形は幅広い。共通するのは一点で、体験が「場所」に固定されていること。人の側が、そこへ行く。

言葉としては米国のゲームやVRの業界から広まったが、いま日本で使われるLBEは、もっと広い。商業施設の一角、駅ビルの一フロア、改装した倉庫や映画館。「場所を持つエンターテインメント」の全体を指す言葉になりつつある。

起点は、郊外の大型テーマパーク

日本のLBEの原型は、大型テーマパークにある。東京ディズニーランドは1983年、千葉・浦安の埋立地に開業した。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は2001年、大阪・此花区の臨海部に開業した。広い土地、大きな駐車場、鉄道の延伸。いずれも都市の中心から少し離れた場所に、巨大な一点として置かれた。

この型の中で、IPとLBEの関係が変わる瞬間があった。USJの「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」(2014年)と「スーパー・ニンテンドー・ワールド」(2021年)だ。世界的なIPが、映画やゲームの画面から出て、歩いて入れる場所になった。来場者は物語の中を歩き、その場でしか買えない商品を手に取って帰る。IPが場所を持つと何が起きるかを、日本で最も大きな規模で見せた事例だ。

変化は、場所の数と大きさに現れている

ここ数年で起きているのは、この「巨大な一点」の型が、複数の小さな点に分かれていく動きだ。ロケーション自体が増え、一つひとつは小さくなり、置かれる場所が都市の中心へ寄っている。

東京では、チームラボボーダレスが2024年2月、麻布台ヒルズに移転して開業した。オフィスと住宅と商業が重なる複合開発の中に常設の没入施設が入った形で、開業から8か月で来場者100万人を超えた(チームラボ発表)。

米国では、Netflixが2025年11月にフィラデルフィア郊外のキング・オブ・プルシア・モール、同12月にダラスのギャレリアに「Netflix House」を開いた。どちらもショッピングモールの中で、約10万平方フィート(約9,300㎡)に『ウェンズデー』『イカゲーム』『ストレンジャー・シングス』などの体験と、飲食、物販を束ねている。配信のIPが、モールの一角を自分の場所にした。

『イカゲーム』は同時に、体験型ゲーム施設チェーンのImmersive Gameboxと組んで多拠点で展開している。街ごとにある小さな箱へ、同じIPを届ける方法だ。日本でも、大阪・難波では約1,000㎡の都市型体験施設「L-COMPLEX」が2026年内の開業を予定している。テーマパークの一区画ほどの面積で、体験と飲食と物販を一つにまとめる構えだ。

図にすると、こうなる。かつて都市の外縁に一つだけあった大きな光が、いまは街の中に、小さな光として次々と灯りはじめている。

夜の都市。遠景に一つの大きなテーマパークのシルエット、前景の街の中に小さなLBEの光が複数灯り、入口に人が集まっている
図|郊外に一つだけあった大きな光から、街の中に散らばる小さな光へ。ロケーションは増え、小さくなり、都市の中心に寄る。

IPにとってのLBEは、ファンと会う最後の一マイル

なぜIPホルダーが場所を持ちたがるのか。USJで起きていたことが、そのまま答えになる。IPが場所を持つと、その地域でIPに触れる人が増える。触れた人はファンになり、ファンは会いに来る。そして、その場所でしか買えないものを買って帰る。認知、エンゲージメント、収益化が、一つの場所の中で一度に起きる。

任天堂はこれを「任天堂IPに触れる人口の拡大」という基本戦略として言葉にしている(2019年の経営方針説明会)。ゲーム機の外で、人がIPに触れる接点を増やす。テーマパークはその柱の一つだ。配信や動画で世界中に届いたIPにとって、足りていないのは「触れる」の最後の一マイルであり、LBEがそれを担う。

だからIPホルダーにとって、LBEは事業そのものになりつつある。Netflix Houseは物販と飲食を最初から組み込んでいる。体験して、食べて、買って帰る。来たファンの気持ちを、その場で売上に変える装置だ。

商業施設にとってのLBEは、来る理由になる

一方の商業施設側には、別の切実さがある。買い物はオンラインで済む。だから施設には、そこへ行く理由が要る。LBEはその理由を作る。人は体験のために来て、ついでに買い、食べ、滞在する。Netflix Houseをモールが迎え入れたのも、麻布台ヒルズが常設の没入施設を核に据えたのも、同じ動機からだ。

ただし、都市の中に置いた施設がすべて残ったわけではない。お台場のイマーシブ・フォート東京は、旧ヴィーナスフォートの建物を使って2024年3月に開業し、2026年2月末に営業を終了した。運営会社の発表によれば、少人数の濃い体験に需要が偏り、施設の規模が過大だと判断された。一方で、その看板だった『今際の国のアリス』の体験は閉館後にハウステンボスへ移り、2026年8月に常設のアトラクションとして再開している。売れていたのは体験で、過大だったのは箱だった。

都市型LBEの勝ち筋は、時間あたりに何人を通し、一人がいくら使い、どれだけの人手で回るかにある。この設計が、立地より先に来る。

街の中で、小さく、濃く

大型テーマパークは残る。USJは2,000億円規模の拡張を進めているし、巨大な一点の求心力は変わらない。その足元で、もう一つの層が育っている。商業施設の一角、駅ビル、改装した倉庫や映画館に、IPと世界観を持った小さな場所が入り、街の日常の中で人を集める。この層が、LBEという言葉の中身をいま書き換えている。

NYXは、この層を設計する会社だ。USJやオリエンタルランドの出身者が常設型エンターテインメントの現場で身につけた「時間あたりの処理人数と客単価から場所を設計する」作法を、街の中の小さな場所に持ち込む。IPホルダーには、ファンと会う最後の一マイルを。商業施設には、来る理由を。その両方を一つの場所で成立させることが、私たちの仕事になる。

大きな一点から、街に散らばる小さな光へ。
LBEは、街の真ん中で、次の形になる。

— Hiroki Wasada · CEO, NYX

出典

  1. チームラボ「チームラボボーダレス(東京・麻布台ヒルズ)、来場者数100万人を突破」PR TIMES、2024年10月 prtimes.jp
  2. Netflix IR「Netflix House Philadelphia is now open」2025年11月/「Netflix House Dallas is now open」2025年12月 ir.netflix.net
  3. The Hollywood Reporter「Netflix House Opening Dates Revealed for Philadelphia and Dallas Locations」 hollywoodreporter.com
  4. Blooloop「Netflix partners with Immersive Gamebox for Squid Game experience」 blooloop.com
  5. 株式会社刀「『イマーシブ・フォート東京』営業終了のお知らせ」 katana-marketing.co.jp/日本経済新聞「イマーシブ・フォート東京、26年2月末営業終了『施設規模が過大』」2025年12月 nikkei.com
  6. トラベルボイス「ハウステンボス、非日常没入体験の新アトラクションをオープン、8月27日」2026年6月 travelvoice.jp
  7. 4Gamer「任天堂は基本戦略『任天堂IPに触れる人口の拡大』のもと取り組みを3つの柱に整理」2019年2月 4gamer.net
  8. Blooloop「Universal Studios Japan announces first major expansion」 blooloop.com
  9. PR TIMES「新会社『株式会社L-COMPLEX』始動 大阪・難波エリアに都市型体験施設を2026年内開業へ」2026年7月 prtimes.jp